■■ 5月26日(土) ■■

 
■伊賀再発見(22)
「へえ〜 そうなんだ。伊賀は素晴らしい」と好評を博している「伊賀再発見」。これまで慢性甲状腺炎を世界に広めた「橋本病」や大歌人に賛美された才女・白秋の妻、「大河ドラマに高虎を」と奮闘する伊賀文化産業協会専務理事の福田和幸さんらを紹介している。今週は名張市の松明(たいまつ)を770年にわたって奈良・東大寺に寄進する伝統行事を紹介したい。
松明調進 続ける大切さと若い力
関西に春を告げる奈良・東大寺二月堂の修二会(しゅにえ=お水取り)で、煩悩(ぼんのう)を焼き尽くす火の行法「達陀(だったん)」に使われる松明(たいまつ)を770年にわたって調進(寄進)してきたのが三重・名張市の「伊賀一ノ井松明講」だ。その大切な松明を修二会のクライマックスの3月12日、講の人たちを中心にボランティアを含めた110人が徒歩とバスで4時間半かけて無事、東大寺に運び入れた。以下はその同行記である。
夜明け 出発だ
12日朝6時過ぎ。赤目の極楽寺の境内は夜が明けたばかりで、まだ薄暗い。本堂では中川拓真住職(49)が道中の無事と、松明と一緒に平和や人の幸せも運んでほしい、と祈っている。
6時半、ほら貝が鳴る。いよいよ出発だ。伊賀一ノ井松明講の講長・清水重達さん(70)が先頭に立つ。2bほどの青竹の前後にヒノキの板の束を2個ずつくくり付けた荷を担いだ人が続く。竹がしなっている。重そうだ。聞くと、荷の重さは30`を超えるという。荷は5つある。最低5人要るのだ。しかし、見かけたところ講の人には年配者が多いようだ。ここから目的地の上笠間までは10`と書いてある。大丈夫だろうか。山道を登り笠間峠越えをしなければならないからだ。
その行列の中ほどに青い法被姿の若者がいる。その数14人。地元の近畿大学高等専門学校の生徒さんである。引率は川合裕也先生(26)。サッカー部のコーチでもある。若者は全員サッカー部の部員だった。「縁あって毎年、1年生を連れて参加しています」と川合先生。なるほど、これは頼もしい限りだ。
幟(のぼり)を立てて田んぼ道を行く。真っ青な空。日が昇ってくる。間もなくやってくる春を感じさせる。
7時に坂ノ下交差点を渡る。いよいよ登りにかかるのだが、その前の休憩だ。松明講を側面からサポートする「春を呼ぶ会」の代表、福本進治さん(66)によると、講員や同会の会員のほか一般も含めると110人が参加。その中には東京から25人、京都からも6人がきている、という。私の目の前に青竹にくくられたヒノキの松明がある。「春を呼ぶ会」の1人が説明してくれる。「今年のヒノキで樹齢110年。年輪が多いときれいに割れない、生木だから裂けるのですよ。ごつごつしているでしょう。幅も昔は8aだったのが今は10aあるのかな」…
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