▼ひと【NO.8】
「陽だまり文庫」代表・上山ひとみさん

■まちの図書館にいらっしゃい!
子どもがのびのび育つ地域づくりを目指して、町の小さな図書館を開いている人がいる。伊賀市桐ヶ丘に住む「陽だまり文庫」代表の上山ひとみさん(64)である。
30人ほどが会員となりサポートしている。30年あまり前、子ども劇場に参加したのをきっかけに子どもの事を考えたり話し合ったりする場所の必要性を感じた。知人の紹介物件や古民家を改修した場所などを借りたが、維持費等大変厳しい状況であった。そんな時ご主人の「やるなら目立つ所、誰でもが入って来やすい所でないとだめ」とアドバイスをもらい、現在の場所に来て2年。青山小学校から少しあがった道路沿い、大久プラザ1階。確かにここならよく目立つ。「でもあまりPRをしてないので、桐ヶ丘の人でも知らないのでは」と上山さんはいう。店内に入ると上山さんの笑顔が目に飛び込んでくる。図書館のあの堅苦しい雰囲気とは少し違う。正面に飛沫感染防止のビニールをセットした喫茶コーナー。両側壁面の書棚には上山さんが今まで購入した本や会員からいただいた本など約3千冊。(倉庫にはまだまだあるらしい。)その上には会員が描いた絵画。店内にいる数人がコーヒーを飲みながら本を読んだり話をしたりしている。時々笑い声も聞かれる。
近年、活字離れが話題になることが多い子どもたちに、読書の楽しみを知ってほしいと、青山小学校や同学童保育で読み聞かせのボランティアを続けている上山さんであるが、コロナ禍のため、残念ながら最近は子どもが来ることは少ない。
しかし、高齢者を中心に近所の人が集まってくる。店内にいた佐野喜子さん(74)は散歩がてら週に1〜2回は来るという。「ここに来ると心が癒される。好きな本もゆっくり読める」と笑顔で話す。書棚の上の絵画「那智の滝」は、佐野さんの作品である。
その隣には岡森書店の本が置かれ販売もされている。「本屋は待つ商売と言われてきたが、本屋に行けない人も多くなった今、待っていてはだめ。会員が購入希望の本を上山さんに言い、その連絡を受けてわれわれ本屋がここに持ってきて、読者の手に届ける。伊賀市ではここだけ。地域の方に大変喜んでいただいている。今は月に1、2回の訪問だが、今後はもっと増やしていきたい」とは岡森書店白鳳店店長岡森史枝さんの弁。
「コロナが終息したら、子どもや母親にも来てほしい。本を読んだり、子育ての話をしたり。もちろん高齢者の方の憩いの場でもあり続けたい。いつまで続けられるかわからないが、これからも多くの人に助けてもらいながら、できるだけ長く続けていきたい」と上山さんの夢は膨らむ。
個人会員年会費は2000円、家族会員年会費は3000円で店内の本は読み放題、借りることもできる。飲み物も会員割引がある。

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